2020年12月14日(月)
【採血】
 
健康診断に行った。
受付票を取って、等間隔に座られているソファの、やや等間隔でなくなっている場所を探し出して座る。
番号が呼ばれるまで15分ほど待ち、会社からもらった受付書類を出しながら、脇にあった「追加検査表」をちらっと見る。満を持しつつ、それでいて今ちょっと思い付いたくらいの気軽さで、「アレルギー検査って、ねえ、あのお、どんな感じっすかねえ。」と尋ねてみた。
「検査できる項目数も少ないですし今回追加ですと1万円掛かりますしもし気になる点があるようでしたら改めて内科にいらっしゃるのが良いかと思います保険も利くので。」と言われた。私の推理が正しければ、一息に言っていた。
「あ、ああ、じゃあ、はい。」と毅然とした態度で応じ、結局は、元より設定された検査だけ受けた。

胸部レントゲンから心音、聴覚視力血圧、身長体重腹囲夢希望尿、血液まで採られ、丸裸にされた気分である。
何度も言うが、採血は大嫌いである。
私が、針の刺さる自身の腕から思いっきり顔を背けていたからか、もしくは向き直ったときの私がマジで絶望的な顔をしていたからか、採血前は敬語だった看護師さん(同年代か、むしろ年下だったと思う)から、「うんうん、絆創膏は大丈夫?かぶれるとかない?じゃあ、もうちょっと(血を止めるテーピングみたいなの)巻いちゃおうかね。うん、良い血管だったから。」と言われ、採血後の腕をぐるぐる巻きにされた。

優しさに涙をこらえて、最終受付を終わらせる。
身長は5ミリくらい縮んでいた。
体重は1キロ減っていた。

そんな日でも、午後に出張がある日はある。
そこで、職種の近い方々と一緒に仕事をするわけである。

お客さんを待ちながら、初めましての方々と、なんとも、出身地だの、いつ異動してきただの、年齢だの、結婚歴だのをお話するわけで、ああ私は、こういう、とてもプライベートなわりに話して当然な風潮がまだまだあり、その代わりに嘘でも本当でもとりあえず一貫性をもって話してさえいれば責められることもなく、さほど不利益も生じない、実のない世間話をするために大人になったのだと恍惚の表情を浮かべていると、出身大学を聞かれた。
おお、結構踏み込んでくるな、受けて立つぞ、などと思いながら、ぐだぐだと大学名を伝えると、「えうそ、私もなんですよ。」と言われた。
最初は、何が私もなのかよく分からなかったが、すぐ大先輩であることを理解した。専攻も(前身ではあるが)一緒である。まさか、健康診断を受けた日に大学の大先輩に会うなんて思ってもいなかった。

私が好きなことに、過去をくよくよ懐かしむというのがあるが、それと同じくらい、何かしら同族と呼べる人を発見するというのがあるので、大先輩と出会いながら「え、〇〇先生ってまだいる?」『うわー、いましたけど、この前ご勇退されましたー』なんて会話ができて、大変心地よかった。

採血で受けた心身の傷も忘れるくらいだった。
忘れるくらいだった、と言うからには、思い出したということである。
ただ、採血の恐怖を思い返すたびに、「良い血管だったから。」という言葉も同時に思い出され、救われた気持ちになるのである。



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