2018年5月7日(月)
【暇提灯】

昔と、退屈な時間の質が変わってきたように思う。

なんだか最近ずっと同じことを考えているような気がするが、思えば昔から、出不精で行動力のない割には退屈が暇というわがままなところがややあって、とにかく、何かすることがないと嫌だけれども、だからといってやりたいことは何でも実行するようなバイタリティにあふれるわけでもないので「○○さんはいつも何か忙しそうにしてるね」と言われるような人間になるでもなく、むしろ、よくよく考えると特にしたいことすら特にないというありさまであった。それに薄々気付いたのが大学生になってからで、特に確信したのはここ数年である。

ただ、中学生の卒業文集で「今好きなものをいつまでも好きでいたい」とキザなことを書いたあたり、どうやら自分には趣味とか目標とか、単純に言って大好きなものというものとかが、これもしかして自分少ないのではないかという恐れというものは、昔からあったのだろうと思う。

ただ、それにしたって、さすがに子供の頃から、四六時中「やりたいことがないんだよな」とか斜に構えて冷笑などを浮かべながら、三食食べて昼寝して、風呂に入ってテレビを見て、夜食を食べてベッドに入り、「今日もちっとも分からなかったね。明日はもっと分からなくなるね」などとペットに話し掛けていたわけでは、ない。
こう言うとそうでない人には悪い気がするが、それなりに人生楽しく生きてきた方であって、僕なりに日々何かしらに夢中になり、しっかり青春を謳歌していたはずである。

そう考えると、あ、どうやら自分は、歳を取るにつれて、遊びに夢中になれなくなってきたのではないかと思った。

昔は、友人にも本にも食事にも風呂にも睡眠にも、時間が経つのを忘れて没頭したものだが、いまだに僕は長風呂であるが、何だか今は、遊んでいる途中でも、良い意味で言うと、心の余裕なのだろうけれども、悪く言ってしまうと、その楽しい時間に深く入り込めないような、他の何かしらを気にしているような感覚が、ある。
これを僕は、「僕も大人になったものだな」と斜に構えて冷笑を浮かべるような雰囲気で受け止めていたものだが、しかし、この連休、それなりに外出して、帰宅して一人になったときに、ふと、昔は相当あったはずの、遊んだ後の、遊びが終わるのを名残惜しむような感じが、かなり減っていることに気が付いた。

これはなんなのだろうと考えたときに、ピンときたところによると、これは、宿題がなくなったからではないかと思う。

思えば、宿題ばかりの人生であった。
むしろ、どうして人間、こうも宿題が多いのだろうか。小中高大と、宿題だらけではないだろうか。どうしてか。
宿題を出さないと勉強しないからだろうか。
宿題がなかったら勉強しなかっただろうか。しなかったと思う。非常にありがたい制度だったと心底思っている。

僕にとっては、学生までの時間は、全ての時間が、プライベートだった。そのプライベートの中で、やるべきことをやらなくてはならず、しかしなかなかやりたくならず、やらねばならないことをやらずに遊ぶから、それはもう、当然、楽しかったのだろうと思う。遊ぶのに夢中というより、やりたくないことから夢中で逃げていたという表現が、本当のところ合うと思う。
それぐらい、宿題とか、何をやらねばならないのかというのを、気にする少年だった。
それは、高校生になってなかなか宿題を提出するのを不運にも忘れがちになっても変わらず、宿題を気にして、心を痛めていたものである。

しかし今は、やるべきことはあるけども、社会人というのを考えると、公私が昔よりはっきりと分かれているような感覚がある。

つまるところ、昔は、本当の意味で退屈とか暇とか、そういう時間はなかったのではないかと思う。多分僕は、常に、遠かろうが近かろうが、実際にやろうがやるまいが、やらなくてはいけないものというものをずっと気にしてばかりでいて、退屈なふりとか暇なふりとかをしていただけであって、社会人になった今になって本物の退屈や暇というのがやってきたのかと思う。

そう考えると、もしかすると、今の自分にはやるべきことがないのだろうかと、なんだか虚しい気持ちになって帰宅した矢先、テーブルに投げ出していた資格のテキストと、物の散乱した部屋が目に入ったため、今考えたことを忘れないうちにと、夢中になってスマホを叩いている。


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